トークイベントレポート

Nikonトークショー

2014年6月18日(水)~30日(月)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部 2014写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは多くの人気フォトグラファーをお招きして、写真を見ながらのトークショーが行われました。

「東京カメラ部 2014写真展」が開催された6月18日(水)~22日(日)のニコンイメージングジャパンのトークショーでは、谷口 京さんと松本友希さんにご出演いただき「この夏始める、旅写真・街写真」というタイトルで、松本さんがNikon 1 J4で撮った街の写真、谷口さんがNikon 1 V3で撮った旅の写真についてお話ししていただきました。

Nikonトークショー

谷口 京さん(左)と松本友希さん(右)。

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松本さんが使用したのは小さなボディで女性でも持ちやすいNikon 1 J4。谷口さんが使用したのはグリップとビューファインダーを備えたNikon 1 V3。

高速オートフォーカスで渋谷界隈の小さなドラマの瞬間を切り取る

最初に松本さんの街写真が紹介されました。松本さんは普段から街に中にある小さな営みをテーマに撮られていて、小さくて軽いNikon 1 J4は街写真を撮るのにピッタリだったそうです。今回の会場が渋谷ヒカリエということで、渋谷で撮影した写真を見ながらトークが始まりました。

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渋谷・キャットストリートの横にある団地で撮った1枚。松本さんは猫を見つけたら、いつも猫がカメラに慣れるまで話しかけながら撮るそうです。30分くらい経つとカメラに慣れた猫はリラックスして眠そうに。あくびをする瞬間を、液晶画面で触れると、触れた場所にピントを合わせシャッターが切れる「タッチシャッター」を使ってパチリ。

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こちらも速い動きも撮り逃さない高速オートフォーカスならではの1枚。チョウは動きが速くて撮るのが難しい被写体です。動物は行動パターンがあり、観察することである程度の動きは予測できるそうです。最初に構図を決めてチョウが真ん中の位置に来るまで待って、真ん中に来た瞬間をタッチシャッターで撮りました。

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ピンクのリュックが渋谷の女の子らしくてかわいいと思って撮った1枚。女の子は本を読みながら歩いていて、まるで女の子版二宮金次郎みたいで面白いと思い、後ろをずっとついて歩いたそうです。そのとき風が吹いて、髪がふわっとなびいた瞬間です。「髪がなびいた瞬間を切り取っているので、動きを感じる作品ですね。右の空間に配置されているタクシーの赤色も効いていますね」と谷口さん。

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「カメラを持って街を歩くと、普段見逃してしまうようなものでも気づくと思います。まるで宝探しのような気持ちになって、それが街写真の面白さでもあると思うんです」と紹介してくれた1枚。マンションの6階の部屋で見つけたキリンのぬいぐるみ。望遠ズームレンズを使って撮ったそうです。「キリンはかわいいのに、背景にポリバケツが雑然と置いてあってどんな人が住んでいるんだろう。と想像させる写真ですね」と谷口さん。

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キリンのぬいぐるみを撮影していて下を向いたら小さなお花を発見。望遠ズームレンズから単焦点レンズ1 NIKKOR 18.5mm f/1.8に付け替えて、やわらかいボケで小さい花を引き立て存在感を出した1枚。1 NIKKOR 18.5mm f/1.8のレンズは、50mmレンズに相当(35mm判換算)するので、人間の目で見たときに近い感覚で撮れます。自分の気持ちを一緒に写し込みやすいそうです。
続いて横浜・みなとみらいのおさんぽ写真を紹介していただきました。

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被写体が輝く一瞬を写した渋谷の写真に対し、横浜の写真はちょっとぶらしてその場の空気感を取り入れた作品を紹介していただきました。「遊具が動いている様子とか、風が吹く音などが聞こえてくるように表現したかったので、シャッターを長めに開けて撮影しています。光が感じられるように明るめに撮って、爽やかな印象にしました」

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横浜は観光名所なのでそのまま撮ってしまうと、パンフレットのような写真になりがちです。ありきたりにならないように、手前の葉っぱを前ボケにして季節感を出した一枚とのこと。「前ボケを取り入れるとひと味違った印象を与えることができます。スマホだとすべてにピントが合ってしまいますが、デジタル一眼の魅力のひとつに大きなボケを作れるということがあるんじゃないのかと思います」

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神奈川県庁をピンクのブーゲンビリアの間から撮った1枚。「街の雰囲気を取り入れながら自分が動いて視点をちょっと変えると、自分の気持ちが伝わる写真になると思います」とのこと。旗が3枚きれいになびくのを撮るのが大変だったそうです。「けっこうじっくり待って撮るタイプの方なんですね」と谷口さん。

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横浜開港祭での1枚。空を飛んでいるリンゴのバルーン。そのまま撮ってもみたものの、普通すぎて面白くなく、「ふぞろいの林檎たち」を思い出してバルーンをつまんでみたらどうだろうと、自分の手を入れて撮影したそうです。この写真のポイントは、リンゴの芯が見えていること。風ですごくなびくのできれいな形になる瞬間を撮るのが難しかったそうです。

NikonトークショーNikonトークショー

視点を変えたり、遊びながら撮ることが大切という松本さんがオススメするのは、Nikon 1 J4に新たに搭載された「クリエイティブモード」。この機能は、カメラが被写体を判断して66種類あるエフェクトから4種類選び、撮り比べることができるというもの。アジサイは、モノクロ、ニュートラル、クロスプロセス、アヴァンギャルドの4種類のエフェクトが反映されました。

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雨の日は写真を撮らない人も多いかもしれませんが、松本さんが雨の日ならではの写真の楽しさを教えていただきました。「雨は水たまりの反射やあぶくなど、小さな発見が多いので撮っていて面白いんです。雨の日も街スナップを撮ってほしいですね。Nikon 1 J4は小さなカメラなので、荷物にもなりませんからね(笑)ただし、水濡れは故障の原因になりますから、雨の中で撮影する時はケースに入れたり、タオルをまいたりして水に濡れないように注意しながら、撮影しましょう。」

日本海独特の情緒的な風景をシャープな描写で写しとる

続いて谷口さんがNikon 1 V3で撮影した旅写真です。
谷口さんは、日本が撮りたいと思い日本書紀に興味があったので島根県の出雲に行かれたそうです。

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まず最初に紹介されたのは、飛行機から見る富士山の写真。「西日本へ行くときは飛行機は左側の席を取るといいですよ。羽田を飛んでから約10分後に富士山が見えるはずです」と谷口さん。

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式年遷宮でふき替えられたばかりの出雲大社の大屋根。梅雨に入ってしまったので天気が悪かったようですが、逆に山陰のしっとりとした空気感が撮れたそうです。

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谷口さんは、被写体としてアジサイが好きでよく撮るそうです。こちらの写真も「タッチシャッター」を使い、絞り開放で撮ったそうです。

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「僕は犬派なんですよ。でも、猫は被写体としては魅力的ですよね。たまたま車で走っていたら出会ったシーンで、右側の赤い車がポイントになると思って撮った1枚です」 ちなみに釣り人が釣った魚を猫にあげたら、猫は見向きもしなかったそうです。

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沖泊という石見銀山から15キロほど山道を歩いていくところ。リアス式の入り組んだ海岸線のため、海にもかかわらず鏡のように静かな水面と、うっそうと茂る森が水面に映った美しい場所で世界遺産の一部です。「昔の人の営みと自然の調和が美しいと思いました」

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日本海側のリアス式海岸。谷口さんは横浜生まれで太平洋を見慣れているため、日本海の独特な雰囲気や色の違いに魅力を感じるそうです。「この海の向こう側には大陸があって、この先は国境なんだなという独特な雰囲気を感じますね」

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島根の海岸沿いは風が強いので、風車がよく見られます。風車で町の半分くらいの電力をまかなっているとのこと。日本だけど日本ではないような光景に圧倒されたそうです。「曇り空と海の色のグラデーションがすごくきれいにでていますね」と松本さん。

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雨が降ってちょっと止んだときに、微かに水平線に現れた太陽の木漏れ日の写真。この写真は連写モードで撮影したとのこと。「波の表情はちょっと変わるだけで写真が変わるじゃないですか。動いているもの、常に変化して人間の目では捉えられないものを撮って表現するときに、連写モードは有効な機能ですね。水しぶきはコンマ何秒で表情がぜんぜん変わりますからね。この微かな光を捉える描写力はすばらしいですね」

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「Nikon 1 V3は肌の調子がきれいにでますね。この写真も夕方の微かな光で撮っているのに、表情や色合いが綺麗にとれました。地元のおばあちゃんも撮りたかったですね(苦笑)」と、谷口さん。

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島根県石見町は日本三大瓦の石州瓦の産地。谷口さんは日本の瓦の景色が好きだそうで、山陰の狭い路地に並んでいる風景はとても美しかったそうです。

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母猫が子猫にお乳をあげているところです。チルト式液晶モニターを使って、ローアングルにカメラを構えてシャッターチャンスを待って、「タッチシャッター」で撮影したとのこと。「かなり注意したのは背景をぼかしつつ、お母さんの幸せそうな目と赤ちゃんの目にピントがくるように絞りを設定して撮っています」と谷口さん。

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昔ながらの波止場です。現在はコンクリートで固められますが、島根県では石を積んで作ったものが今でも残ってるのだそう。福光石が使われ波で削られても修復はしないで、自然に返していくそうです。

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旅の最終日に行った出雲の大鳥居から海へ行く稲佐の浜の鳥居。出雲大社の祖神様を祀っているそうです。「ちょうど僕たちがいるときに家族連れの人たちも来て、並んで拝んでいる姿がとても日本らしい風景だと思いました。何気ない風景ですけど、日本人の心を感じました」

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日没間際の海の表情を1 NIKKOR 32mm f/1.2のレンズで撮った写真です。この写真は撮ったそのままの画像で、修正していないそうです。「僕は逆光の写真が好きなんですけど、逆光を撮るとレンズ性能が如実にでるんです。このような状況はフレアとか光のいたずらが写り込みやすいんですがそれらは写らず、波のうねりや光のグラデーションがきれいにでました。シャープな描写が非常にニコンらしいと思いますね。」「すごく静寂感があって、旅の終わりだな。という感じが伝わりますね」と松本さん。

最後に、谷口さんがカメラの感想をおっしゃっていました。
「フィルムの写真もよく撮っていて、旅にはレンジファインダーのカメラを持っていくことが多いのですが、Nikon 1 V3は、レンジファインダーのカメラに似た感覚で撮ることができますね。そしてシャッター音がいいです。シャッター音がいいと、写真をどんどん撮りたくなるから大切な要素です」


カメラを持つだけで何気ない日常の世界が変わって見えることを教えてくれた松本さんの街写真、日本人が大切に残してきた文化や風土を旅人の目で切りとり伝えてくれた谷口さんの旅写真。おふたりのお話を聞いると「こうしちゃいられない。今すぐカメラを持って出かけたい! 夏休みはどこへ行こう」という欲求がかき立てられました。きっと、トークをお聞きになった方もそう思ったのではないでしょうか。

谷口 京さん、松本 友希さん、ありがとうございました。


(写真・文 加藤マキ子)

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