エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」



2017年4月28日(金)~5月6日(土)、東京・渋谷ヒカリエにて「東京カメラ部2017写真展」が開催されました。開催期間中のイベントステージでは、人気フォトグラファー、写真業界関係者、歴代東京カメラ部10選などをお招きして、さまざまなテーマでトークショーが行われました。

4月30日(日)に行われたエプソン販売のトークショーでは、プロフェッショナルアートプリンター 小澤貴也氏にご登壇いただき、「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」というテーマでお話しいただきました。

エプソン販売 エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「こんにちは、エプソン販売の小澤と申します。本日は”モノクロプリント”についてお話しさせていただければと思います。東京カメラ部の皆さんは作品をwebでアップされている方が多く、プリントされてる方は少ないのではないかと思います。なおかつこのカラー全盛期にモノクロ写真の話はトークショーの中でも地味な内容なのではないかと思うのですが、モノクロならではの魅力や醍醐味を体験していただくキッカケになれば嬉しく思います」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「わたしたちがよく使うモノクロという言葉は、”モノ”というのは”単一”という意味で、”クローム”には”色彩”という意味があります。つまり、白から黒までが単一の色で表現されているもの。完全に白黒以外でも、一色で表現されたものはモノクロ写真と言います」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「写真の歴史を見てみましょう。銀板、湿板、乾板があり、モノクロフィルムが1800年代後半に生まれます。その後カラーフィルムが1935年に生まれ、1990年代にデジタルカメラが発売されました。つまり昔はカラーで撮りたくてもモノクロでしか撮れなかったんです。逆にカラーで写真を撮ることが当たり前の今は、モノクロで撮る必要性はあまりありません。では、なぜ今みなさんにモノクロプリントをおすすめするかというと、一つはカラーにはない表現方法だから。もう一つは、写真の見方や撮り方が大きく変わるからなんです。カラー写真から色を抜けばモノクロ写真になるかというと、そうではないんですね。カラー写真の場合、8~9割は見ている”色”に惹きつけられます。でもモノクロ写真は濃淡や光、階調で表現をしていくんですね。つまり、カラーで撮影するときとモノクロで撮影するときで、撮るものも撮り方も変わってくるということ。光を見たり、形を見たり…写真を色々な視点で見られるようになります」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「モノクロプリントに必要な機材のお話をしておきましょう。エプソンのColorio V-edition『EP-10VA』というプリンターにはブラックインクとグレーインクが入っています。また、エプソンプロセレクション『SC-PX5VII』のインクには、ブラック、グレー、ライトグレーが入っています。こういったグレー系のインクが多く入ったプリンターはモノクロも得意です」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「モノクロプリントが上手くなるコツは、比較することなんですね。プリントの仕上がりが暗いものと明るいもの、コントラストの高いものと低いもの…どちらが好きか比較していくと、思い通りのプリントをきれいに作ることができます。『EP-10VA』にはパソコンを使わずに画質にこだわれる“作品印刷機能”が搭載されていて、明るさ・コントラストなどの調整結果を一覧でプリントすることができるんです。暗室と同じ作業をしてくれる機能を持ったプリンターです」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「『EP-10VA』や『SC-PX5VII』と対応ソフトの『Epson Print Layout』を使えば、カラー写真からでも簡単にモノクロプリントが作れます。明度、コントラスト、トーンなどの調整も直感的な操作で行えます」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「次に、モノクロプリントに適したデータについて。デジカメを使っている方の場合、おすすめはカメラのモノクロモードを使うことです。モノクロモードで撮っておいて、あとはプリントするだけ。最近はこれが非常にいいですね。こだわる方はJpeg+RAWでJpegはモノクロモードで撮っておく。これがポイントです。撮りながらモノクロの状態で確認できるので、モノクロ写真の感覚を身につけやすくなります」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「ここからは実際にどのようにモノクロプリントを作っていくか、ということをお話ししたいと思います。早速ですが、クイズです。いま画面に色が4色表示されていますが、これをモノクロにすると一番明るくなる色はどれだと思いますか?多分、黄色と思う方が多いのではないかと思います。これをPhotoshopでグレースケールに変換すると…」

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小澤「実は全部同じ色になるんです。カラー写真をそのままグレースケールに変換すると、こういったことが起きるんです。階調がない、ヌルッとした写真になってしまいます」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「こちらの写真はカラーをモノクロにしたものですが、先ほどのようにただ色の情報をなくすのではなく、被写体の質感を意識して仕上げています。同じモノクロ写真でもこちらは街の歴史を感じる重厚感があり…」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「こちらは朝の爽やかさが出てきます。このように、単にモノクロ調にするだけではなく、どういう風に自分のストーリーを作るかというのがモノクロプリントの面白さの一つなんです」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「モノクロは見る方に色々な想像を働かせます。この写真にはお城と二人の女の子がいますが、仕上げ方によってお城が主役にも女の子たちが主役にもなります。また、人とお城両方にスポットを当てれば、”二人の家なのかな?””誰かに会いにいくのかな?”と、二つの関係性を表した仕上げ方もできます。このように色がない中で撮り手がどうやってストーリーを伝えるのか、ということがモノクロプリント作りでは重要になります」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「では、実際にカラー写真からモノクロを作ってみたいと思います。Photoshopで『グレースケール』を選ぶと自動的にグレーの写真になりますが、自分のイメージが作りにくくなるんですね。おすすめはPhotoshopの『白黒』という機能です。ちなみにRAWでモノクロを作りたい場合は、LightroomでもPhotoshopでも『グレースケール』にチェックを入れてください。モノクロを色ごとに調整できる機能があり、例えば写真の中の赤いところだけを明るくしたりコントラストを強くしたりもできるんです。こうやって自分が見せたいもの、主役にしたいものを明確にしていきながら、自分の好みのモノクロをまず作ります」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「次に大切なのが明るさとコントラストです。Photoshopは『明るさとコントラスト』で調整し、Lightroomは『露光量』と『コントラスト』というスライダーで調整できます。コントラストを上げると元気な写真になりますし、逆に下げると少し落ち着いた印象になります。明るさとコントラストを調整すると、写真の空気感が変わっていきます」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「カラープリントとモノクロプリントで大きく違うのは粒状性です。カラープリントに粒状感があるとちらついて見えてしまうのですが、銀塩の粒状は表現の一つであり、重要なポイントとなります。Photoshopの場合は『フィルター』内の『Camera Rawフィルター』を選択し、『粒子』という項目のスライダーを調整すると粒状を簡単に入れられます。モノクロプリントの場合、粒子を強くすればするほど写真のパワーも上がっていきますし、立体感や質感が生まれやすくなります」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「モノクロプリントでは用紙選びも重要なポイントになります。半光沢とマット、紙を変えて仕上げたものがこちらです。印象がだいぶ違いますね。カラープリントでよく使われているのはRCペーパーという光沢紙で、モノクロプリントでプロの方がよく使っているのはバライタ紙です。コットン紙や和紙なども人気です。手ざわりなども含めた素材の違いで写真の表情が変わるのも、プリントで作り込む楽しみのひとつだと思います」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「もう一つ重要なのは紙の白色です。インクジェットプリンタには白インクが入っていませんので、紙の白がモノクロプリントの中での白になります。ちょっと黄色い白、ちょっと青い白、ニュートラルな白…色々な白色の紙がありますが、どんな紙を選ぶかによって、写真の明るいところの印象が変わります。少し黄色い紙の方がハイライトの諧調が豊かに見えるので、モノクロをやる人は黄色めの紙を選ぶ方が多いです。また、デジタルで撮った写真はシャドウ部分は救えるんですが、ハイライトはすぐ飛んでしまいますよね。そういう意味でも黄色い紙はデジタルとは相性がいいなと思います。パッキリと見せたい方は青い紙を使っていただければと思います」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「黒の締まりも重要です。基本的に光沢の方が黒は締まりやすく、マット系や和紙は黒は締まりにくくなっていきます。紙が色々選べるというのはインクジェットプリントだからできることなので、ぜひ試してみていただきたいです」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「モノクロプリントで余白なしというのはあまりなく、基本的には余白をつけます。余白が広くなるほど集中が強くなり、特別感も強くなります。余白が狭くなると外の世界への広がりができます」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

小澤「このプリントで気になるところは、左端の白飛びしているところです。へこんでみえますよね。モノクロプリントの場合は四角の中で撮ったことを示したほうがいいので、レタッチをして四角に見えるようにしていきます。写真の中の白が四辺にある場合は気をつけておきましょう。こういうところはプロの方も見ているので、気を使ってレタッチするとそれが伝わります」

エプソン販売 小澤貴也氏(プロフェッショナルアートプリンター)「あなたの写真を深める、モノクロプリントの魅力と制作のコツ」

トークイベントの最後には2名様限定でエプソン販売からオリジナルポートフォリオボックスがプレゼントされ、争奪ジャンケン大会がおこなわれました。

小澤「今までカラーしかやったことがなかった人も、これをきっかけにモノクロプリントに挑戦していただければと思います。「エプソンのフォトポータル」では、詳細なプリントのコツもご紹介しています。エプソンはインクジェットプリンターで皆さんの写真ライフを豊かにするお手伝いをしていきます。本日はありがとうございました」


<トーク内で紹介されたモノクロプリントにオススメの機材・ソフトウェア>
エプソンプロセレクション SC-PX5VⅡ
Colorio V-edition
Epson Print Layout

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